TVやスマホで目を悪くする人がやっている3つのこと

先生教えて!子どもにTVやゲーム、スマホを禁止するのは無理!
目を守るためには、どうすればいいですか?

先生教えて!子どもにTVやゲーム、スマホを禁止するのは無理!目を守るためには、どうすればいいですか?
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デジタルデバイスとの上手な付き合い方

デジタル機器が普及するにつれ、世界の近視患者は増加の一途をたどっています。
でも私たちはもはや、テレビやスマホ、ゲーム機、パソコン、タブレットなどを手放すことはできません。
子どもたちの目にも深刻なダメージを与えかねないデジタルデバイスとの上手な付き合い方について、二本松眼科病院副院長の平松類先生にお話をうかがいました。

―――テレビやスマホやタブレットって目に悪いのかもしれないと、私たち現代人はみんな少なからず感じています。実際のところ、どうなのでしょうか?

「よくはないですね。テレビやスマホ、タブレット、それにパソコンも同じですが、共通するのは液晶画面が発光していることです。そもそも人間の目は、発光体を見つめるようにはできていませんから」

―――確かにそうですよね。太陽を直接見るわけはないですし。

「ホモ・サピエンスの数万年の歴史で、目に入る発光体は『火』ぐらいという時代が長く続きました。そのほかは、太陽の光を反射させたものを見ているわけです。ところが、デジタルデバイスが普及したおかげで、最近の人類は常に発光体を見ています。当然ながら目には大きな負担がかかっています」

―――なるほど。では発光体であるデジタルデバイスはそもそも目に負担をかけているという前提で、さらにテレビ・スマホ・タブレットで目を悪くする人が、知らず知らずにやってしまっていることはどんなことがあるでしょう?

「大きく分けて3つあります。一つは“近い距離で見る”こと。二つ目は“悪い姿勢で見る”こと。そして三つ目は“長い時間見る”ことです」

―――距離・姿勢・時間が、「悪の三条件」というわけですね。一つひとつ、詳しくお話しいただけますか。

「まず“距離”の問題ですが、デジタルデバイスの中でもとりわけスマホが問題です。テレビはモニターの大きさにもよりますが、だいたい1〜2メートル以上離れて見ることが多いようです。紙の本を読むときは30cm程度で、タブレットを見る平均距離も30〜40cm。30cm以上離れていれば、近視発症のリスクは低くなるので、テレビやタブレットは意識していれば、目を悪くする原因にはなりません。でもスマートフォンを見るときの平均距離は約20cmと言われています」

―――30cmと20cmでは、そんなに大差はないとも思えますが、違うものなんでしょうか?

「はい。その10cmの違いが、目に大きな負担をかけています。スマホとタブレットで見る距離が分かれる理由は、表示される文字の大きさです。スマホに表示される字は小さいので、自然と顔に近づけてしまうのです。もしお子さんにスマホを与えるなら、大きめのディスプレイのものを選んだ方がいいですし、設定によって文字を大きく表示できるようにするとなおいいですね」

―――次に“姿勢”について。大人である自分にも覚えはありますが、スマホやタブレットを見るときって、確かにひどい姿勢になっていることが多いですよね。

「デバイスのモニターが視線の水平よりも上にあると目の疲労度が増します。人間は上の方を見るとき、目を大きく見開くからです。上目づかいにしたときと、下目づかいにしたときで目の表面積を比べると、上目の方が2倍の大きさになっているんですよ」

―――確かに、女の子が自撮りをするとき、スマホを上の方に掲げて撮ることが多いですが、目が大きくなるからなんですね。

「そうですね。でも、目を大きく開けすぎると眼球の表面が乾燥し、ドライアイから眼精疲労につながってしまいます」

―――でも、スマホやタブレットをそんな上目づかいで見ることはないような気もするんですけど

「いえいえ。寝っころがりながらスマホを見ることはありませんか?」

―――あります。毎日やっているかも……。

「寝っころがると、通常よりもモニターを上の方に掲げることが多く、知らず知らずのうちに上目づかいになっているんですよ。心がけるべきは、モニターを視線と水平に保つか、水平より15度下を目安に角度を調整することです」

―――最後に“時間”についてうかがいます。テレビにしろパソコンにしろ、スマホ・タブレットにしろ、ついつい時間を忘れて長時間見続けてしまいがちですが、「このくらいの時間にした方がいい」という基準はありますか?

「アメリカの眼科学会では、デジタルデバイスを使うときの目安として“20-20-20ルール”というものを提唱しています。20分見たら20秒間、20フィート(約6メートル)以上先のものを見ましょうという提言です。日本の厚生労働省も同じ意図で“VDTガイドライン”というのを定めていて、60分間モニター作業を続けたら一回休憩を入れましょうということになっています。定期的なお休みを入れることが、目の不調をきたさないためには重要です。大人は60分ですが、子どもは少なくても45分に一回くらいは休憩を入れるように、保護者の方が気をつけてあげてるといいですね」

―――ありがとうございました。とても参考になりました。

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