目が悪くならないスマホの見方

スマホは目が悪くなるからといっても……。
そんな悩みを抱える親御さんに子どもをスマホに見せるときに気を付けたいたった2つのこと

スマホは目が悪くなるからといっても……。そんな悩みを抱える親御さんに子どもをスマホに見せるときに気を付けたいたった2つのこと
画像素材:PIXTA

近ごろ、近視の子どもが増えている

「近ごろ、近視の子どもが増えている」と言われており、その原因としてよくあげられているのが、スマホやタブレット、携帯用のゲーム機といったものです。
確かに、長い時間スマホやタブレットを見ていると大人でも目の疲れを感じますし、長時間の使用は目に悪いようです。
余談になりますが、アフリカの人たちはスマホの普及に伴い、視力が落ちているなんていう話もまことしやかに流れてきています。とはいっても、今の時代、スマホやタブレットなどをつかわせないというのは難しいのではないでしょうか。
では、スマホやタブレットが目に悪いからといって、まったく使わせないといっても、なかなか難しいですよね。では、どうすればいいのでしょう。

実は、過去に目を向けると、15世紀のヨーロッパでも、近視が増えたことがありました。
ドイツのヨハネス・グーテンベルクという人物が、活字を使った大量印刷の技術を考案したおかげで、本が急速に普及しました。
その結果、16世紀には近視用メガネも産業化されたのだそうです。

書物は人類の進歩に欠かせないものだったので、いくら目に悪いからといっても廃れることはありませんでしたし、子どもにも積極的に読書がすすめられました。
その代わり、目に負担をかけない正しい本の読み方が編み出され、親から子へと伝えられてきました。小さな頃、誰もが親からこんなことを言われたのではないでしょうか。
・暗いところで本を読んではいけません
・本は目から離して読みなさい
・寝転がって読んではダメ。椅子に座って、正しい姿勢で読みなさい

スマホやタブレットとの付き合い方

「そんなことはわかっている。知りたいのは、スマホやタブレットとの付き合い方だから」と思わないでください。
医学博士・眼科専門医の木下望先生によると、スマホやタブレットの“目を悪くする要因”は、本とまったく同じということなのです。
「スマホやタブレットは液晶画面が光っていることを気にする人が多いですが、実は問題の本質はそこではなく、“目からの距離”なのです。画面の小さなスマホは顔に近づけがちになります。成人を対象にした調査によると、目から対象までの平均距離が、書籍のときは33.7cmなのに対し、スマートフォンは20cmを切っていました。子どもに対する同様の調査では、教科書が31.3cmなのに対し、タブレットは24.2cmです。人間の目は、20cm以内のものを見続けると負荷が大きくなり眼軸長の延長を誘発、近視につながるとも言われています。30cm以上離してものを見続けたときと、30cm以内で見続けた場合の近視発症率に有意差があるという論文もあるのです」

小中学校でも、子どもにタブレットを支給する時代になりました。
子どもとスマホ・タブレットの関係は娯楽のみならず、今後は学習の面でも大きくなることは間違いありません。
今の子どもたちは、スマホやタブレットがあって当たり前の社会に生まれ、生きていくわけですから、遠ざけるよりも正しい付き合い方を教えてあげるのが正解です。
子どもがスマホやタブレットを見るときは、本を読むときと同じように、目から30cm以上離すように注意を促してください。

また、夢中になりすぎて、まばたきが少なくなる可能性があります。10分毎に、目をぎゅっとつぶってまばたきをするなど促すのもよいでしょう。

それだけで、子どもの近視発症はかなり予防できるはずなのです。

〈参考文献〉
木下 望 『近視から子どもたちの目を守れ! 近視と闘い続けた眼科医からのメッセージ』(2021年、幻冬舎)
平岡孝浩・二宮さゆり編『クリニックで始める 学童の近視抑制治療』(2021年、文光堂)

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