低濃度アトロピンの予防的使用
近視になるのを予防できる目薬って?

子どもの近視ができるだけ進まないように抑えるための治療
「近視は遺伝するっていうし、今はよくても、この先、この子も目が悪くなるかも……」自分自身に近視がある場合、こんな心配をする親御さんも少なくないのではないでしょうか。
暗いところで文字を見ない、なるべく1日1時間~2時間は外で遊んで太陽の光を浴びるなど、なるべく目が悪くならないような生活習慣を送ることが大切ですが、さらに、子どもの近視ができるだけ進まないように抑えるための治療に処方される「低濃度アトロピン点眼薬」を近視予防に使う方法もあるといいます。
「アトロピン」は、これまで子どものメガネを処方するときの調節麻痺剤として、1%の濃度の点眼薬で使われてきた薬です。強制的に瞳孔を開いたままにする薬剤なので、目のピントを調節する力を麻痺させる効果があります。
このままの濃度だと、点眼するとピンぼけの状態になって手もとに焦点が合わなくなり、まぶしさを強く感じます。そのため、このアトロピンを0.01%、または0.025%に希釈したものを継続的に点眼して、眼軸が伸びるのを抑える目的で行われているのが「低濃度アトロピン」による近視治療です。夜、寝る前に点眼することによって、就寝中に瞳孔を開いた状態に保ち、近視が進みにくくなる効果が期待できます。
さらに詳しく知りたい方は、下記の関連記事を参照してみてください。
CS眼科クリニック院長の宇井牧子先生に、予防的な使い方について聞きました。

「実際に、両親または親のどちらか近視である、兄姉がすでに近視になっている、あるいは遠視だったものが近視に近づいてきたなど、近視リスクが高いと思われるお子さんの場合は、まだ視力が正常である状態でも、低濃度アトロピンの使用をすすめる例があります。近視は親から遺伝することが明らかになっていますし、近視になるリスクが高いお子さんの場合は、積極的に使用したほうがいいと私は考えています」
ただし、宇井先生によれば、ごくまれに低濃度アトロピンが使えないケースもあるといいます。
「夜寝る前に点眼しても、翌日の日中のまぶしさを訴えるお子さんがいます。しかし、瞳孔が開いて大きくなることは、それだけで近視の進行を抑える効果があります。“生活に支障がなければ続けてください”とお話していますが、中には継続することが難しいケースもあります。」
ちなみに、 “低濃度アトロピンによる治療を行っている途中でメガネをかけてしまうと、十分な治療効果が得られないのではないか”“メガネで視力を矯正してしまったら、近視が進むのではないか”などの心配を抱く方も多いとか。
この心配に対しては、宇井先生は「これは誤解であり、むしろメガネでしっかり視力を矯正したほうが近視が進行しにくい、ということもわかっています」と断言。治療とメガネでの矯正は、安心して併用できそうです。

子どもの近視に関する研究が進んでいるシンガポールでは、就学前の子どもへの予防的治療としての臨床研究がすでに始まっています。現代は、かかってしまった病気を治療するだけでなく、進行する前に見つけて積極的に治療を始める「予防医療」の時代です。子どもの近視も同じように、未然に防ぐことができれば理想的ですね。
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