何か問題がある? 強い副作用はある?
日本で未認可の近視治療薬「低濃度アトロピン点眼薬」

できる限り安心・安全な治療薬を使いたい
大切なお子さんの目にかかわることだから、できる限り安心・安全な治療薬を使いたいですよね。最新治療は気になるものの、いざ使うとなると、 「本当に大丈夫なの?」 「もう少し様子を見てみよう……」と思ってしまう方もいらっしゃると思います。子どもの近視の進行を抑える効果がある低濃度アトロピン点眼薬も、世界の国々で使用されており、日本でも処方する眼科医が増えている最新治療薬ですが、実はいまだ厚生労働省の認可がおりていません。
認可されていないということで、
何か問題があるのではないか?
強い副作用が出るのでは?
と思われる方も多いのではないでしょうか。

また、慌てずに、きちんと認可されてから使えばいいのではないかと思う方も多いはずです。でも実は、認可がされるまで待っていると、後悔してしまう可能性があるというのです。
そこで、医学博士・眼科専門医の木下望先生に、この薬の安全性ついて疑問をぶつけてみました。

「結論から言えば、低濃度アトロピンの安全性は高いと思われます。アトロピンはもともと、子どもの遠視の度数を正確に測定するときに、子どもの調節力を麻痺させるために使われていた検査薬で、瞳孔を開きっぱなしにさせる効果もあります。
でも遠視の検査薬として使われるアトロピンが1%という濃度なのに対し、近視の進行抑制のために使われるアトロピンはずっと低濃度の0.01%か0.025%です。日常生活に支障が出るような副作用はほとんど出ないと考えていいでしょう」(木下先生)
1%のアトロピンを点眼すると、日中にまぶしさを感じたり近くのものにピントを合わせにくくなったりしますが、近視の治療に使われる濃度の低いアトロピンについては、そうした心配はほとんどない、といいます。
木下先生によると、すべての薬には何らかの副作用があるので、低濃度アトロピンも「“まぶしさ”が出る場合がある」と説明をするそうです。
すると中には、「そう言われてみると確かに、少しそんな感じがするかも」という人はいるそうですが、ほとんどの場合は点眼を継続しているうちに慣れていき、そうしたことも感じなくなるといいます。

低濃度アトロピンは現在、日本の製薬会社が大学と共同で治験を実施中で、数年のうちに厚生労働省から正式に認可がおりる見込みです。
では、認可が降りるのを待ち、保険診療ができるようになってから使うのがいいのでは?と思うかもしれません。
その疑問を、再び木下先生にぶつけてみました。
「子どもの場合、発症年齢が低いほど強度近視になりやすいので、近視がはじまったらできるだけ早く治療を開始することが望ましいです。低濃度アトロピンは科学的根拠のある良い薬ですが、進んでしまった近視を元に戻す効果はなく、あくまでも進行を抑える薬なので、近視が軽いうちに使いはじめるのがもっとも効果的です。認可されるまで待っていると、その間にも近視が進み手遅れになるリスクがあることを忘れないでほしいです」(木下先生)
こればかりは保護者の判断次第なので、あまり強く押しつけることはできないということですが、もし子どもの近視がはじまっており、早めに低濃度アトロピンの処方をしてもらいたい!ということであれば、まずはお近くの眼科医院に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

〈参考文献〉
木下 望 『近視から子どもたちの目を守れ! 近視と闘い続けた眼科医からのメッセージ』(2021年、幻冬舎)
平岡孝浩・二宮さゆり編『クリニックで始める 学童の近視抑制治療』(2021年、文光堂)
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