子どもの視力と成績

わが子の成績の低迷は、近視が原因?ちゃんとメガネを持たせてるのに……という親の誤算

わが子の成績の低迷は、近視が原因?ちゃんとメガネを持たせてるのに……という親の誤算
画像素材:PIXTA

視力の低下を放置していませんか?

近頃、うちの子の学校の成績が思わしくない。なにが原因なのか──。そんな悩みを抱えているお母さん、お父さん、もしかして、お子さんの視力の低下を放置していませんか?

公立高校で長く教鞭をとり、その後も予備校や個別指導塾で子どもたちに英語を教えている岡田順子先生によれば「はっきりしたデータがあるわけではないだろうけれど、視力は成績に影響していると思う」とのこと。あなたのお子さんの目は、だいじょうぶですか?

「小学校のうちは、私たち教員も黒板の文字は大きく書きますが、中学校に上がったとたんに学習内容が複雑になります。特に、英語や数学などは、板書の文字も小さくなってきて、板書をノートに書き写す作業も大変。数学では二乗の記号や小数点が小さいし、英語でもどこに“,”がついているのかによって文章が変わるし、小文字のhとnなども判別しにくいですよね。そのような時期に、近視や乱視が進んで黒板の文字がはっきり見えなかったり、メガネの度が合っていなかったりしたら、写し間違いをしても気づかず、そのままになってしまいます。あとでちゃんと復習できないし、学習効率が落ちることは容易に想像できます」(岡田先生、以下同)

なかには、黒板が見えていないのに見えたふりをする生徒や、見えにくそうにしていても黙っている生徒もいます。どちらかといえば内向的な子が多くて、“先生、まだ写してないから、ちょっと待って”と言えないため、結局は書ききれないうちに消されてしまうことのくり返しです。
岡田先生が勤務していた公立高校では、毎年実施される健康診断で、それぞれの担任が生徒たちの視力測定を担当していたそうです。

クラスの7割くらいが近視だった

「平成のはじめ頃でしたが、高1の女子クラスを受け持ったとき、視力測定をしたら、クラスの7割くらいが近視だったのでびっくりしました。メガネやコンタクトレンズで矯正したときの視力も測るのですが、持っているメガネの度が合っていないことも少なくなかったように記憶しています。
クラスの7割も近視の生徒がいると、どの子を前のほうに座らせればいいのか、困ってしまいますよね。さらに、席替えのときも、測定した視力によって席を決めるのではなくて、たいていは自己申告制。前に来たい子が前方の席に座りますから、よく見えないまま授業を受けている生徒もいたはずです。

今でも、本当はよく見えないのに自己申告できない生徒は、後ろのほうに座って、“先生と目が合いませんように、指されませんように”と願いながら気配を消して存在していると思います」
さらに、学校ではなく学習塾の場合は、席替えを認めてもらえないケースもあるのだとか。
「私が以前に勤務していた大手受験塾では、生徒の席順は決められていて、絶対に動かさないんです。黒板が見えない場合はメガネをつくるなり、自分で考えて対処することが基本でした。ほかにも、毎回のテストの成績順で席を決めている塾もありますよね」

なるほど、席替えは保護者側の思うような解決策にはならないようです。“だったら、メガネを作って持たせればだいじょうぶ”と思っていますか?
現実には、これもうまく機能していないケースがあるのだそうです。

「最近は、昔ほどメガネも嫌われなくなりましたけれど。子どもさんたちのメガネがおしゃれになっていて、小学生のうちからメガネをかけることへの抵抗がなくなってきているように感じます。それでも、特に女の子の場合、親御さんがせっかくメガネをつくってくれているのに、“私には似合わないからイヤ”といって、ランドセルや鞄のなかにしまったまま。女の子は、自分の外見を気にするような年齢になると、コンタクトレンズを入れる子もいますが、見えないのにメガネをかけず、いつも見えにくそうにしている生徒もいます」

メガネをかけたがらない子

さらに、岡田先生曰く、「メガネをかけたがらない子は、早くからおしゃれに興味を持つ子が多いので、中学生になると爪や髪の毛をいじっていたりして授業に身が入らないことも多い」とか。
「そういう子たちはスマホが好きで、小さいうちから友だちどうし、スマホでやり取りしてばかりいるので、ますます近視が進むのではないかと心配になります」

個別指導塾では、何回か授業を受け持つうちにそういう子どもとも打ち解けてきて、子どものほうから“本当はね、近視だから黒板やホワイトボードがよく見えないんだけど、私にはメガネが似合わないから、かけないの”と話してくれることもあるそうです。
「そんなときは、“あなた、いいメガネ持っているじゃない。かけて見たら?”と促して、“あら、似合うじゃない! 素敵よ”と大げさに褒めてみたりします。生徒たちの近視に対して、教員にできることって、その程度なんです」

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