ストレスが引き起こす“心因性視力障害”ってなに?

それが今回のテーマ、「心因性視力障害」です。
心が原因で目が悪くなるなんて、そんなこと本当にあるの?と疑う方もいるでしょう。
でも兵庫県で新見眼科など5軒の眼科医院を運営する医新会理事長・新見浩司先生によると、心因性視力障害は決して珍しいものではなく、「学校検診をすると、クラスに必ず一人はいます」とのこと。
7歳~12歳(特に9〜11歳で好発)に多く、男児より女児の方が約2〜4倍多いとされる心因性視力障害は、普段は特段の支障なく暮らしているのに、いざ視力を測ると、矯正が必要なほど低い結果になります。
それは決して仮病ではなく、視力検査のときは本当に見えていないのです。
心因性視力障害の原因は心理的ストレスです。
そのため、無邪気な未就学児や低学年よりも、心がより複雑になってくる10歳前後で多くなるようです。
子どもの場合、親子やきょうだい間の問題や、いじめ、虐待、友達や先生との人間関係、勉強や運動の不振など、様々な要因で精神的葛藤や欲求不満が大きくなり、心因性視力障害につながる場合があります。
しかし、これはやや教科書通りの答えであると新見先生は言います。
「多くの場合、原因は単純な“緊張”です。子どもにとって、視力検査という特別な状況は、バッターボックスに立たされているようなもの。普段はスラスラと本を読んでいるのに、教室で指名されると教科書がまともに読めなくなるようなタイプの子は、視力検査の場でも目の筋肉が過緊張状態になり、ピントが合わせにくなります。緊張が強くなると近視が強く出るだけではなく、“らせん状視野狭窄”や“管状視野狭窄”といって視野が狭くなることもあります」
もちろん、根深い心のストレスがそうした過緊張を引き起こす場合もあります。
そういう根本的な問題がある場合はそれと向き合い、心療内科や精神科の受診が必要となることもありますが、多くは“視力検査という場”に対する単純な緊張が多いのだそうです。
特に内向的で真面目、そして自己表現が苦手な性格のお子さんに、そうした傾向が見られやすいのだとか。

心因性視力障害が疑われる場合、やってはいけないのは、学校検診での悪い結果を鵜呑みにして、すぐに眼鏡屋さんへ走ってしまうこと。
眼鏡屋さんでの視力検査でもやはり緊張して視力が出ないと、普段は問題なく見えているのにもかかわらず、とんでもなく度の強いメガネを作られてしまうことがあるからです。
学校検診の視力検査で悪い結果が出たら、まず眼科専門医で詳しく調べてもらいましょう。
特に視能訓練士さんがいる眼科医がおすすめ。
心因性が疑われる場合、視能訓練士さんは「このレンズを入れると、よく見えるようになるからね」と子どもに声をかけながらリラックスさせ、マイナスのレンズとプラスのレンズを組み合わせて、わざと±0の伊達メガネ状態でかけてみたりします。
そうした検査テクニックにかかれば、わかりにくい心因性視力障害もすぐに判明するというわけです。
心因性視力障害は、もしも原因となっている根本的な心理的ストレスがあるのであれば、それに対処することが第一。
でも単純に緊張しやすいタイプの場合は、視力検査の前日に保護者が家で、視力検査表を使って練習させてあげるのがいいでしょう。
視力検査に限らず、もう少し成長すれば、様々な場面での緊張の解き方もおのずと習得できるものなので、それまではぜひご家族の方がサポートしてあげてください。
〈参考文献〉
新見浩司・監修『お医者さんがすすめる視力回復 本物の「目の体操」7日間メニュー』(2013年、リンケージワークス)
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