「やめなさい」は一番の悪手!
ポイントは、「命令」ではなく「質問」
――うちの子どももそうなんですが、ゲームとか、今はスマートフォンなどでYouTubeとか、長時間、観ているので、「目が悪くなるので、やめなさい」というのですが、なかなかやめないんですよね。
心理学の専門用語で心理的リアクタンスっていうんですけど、リアクタンスって抵抗っていう意味なんです。例えば「この箱を絶対開けないで」って言ったらどうですか。開けたくなりますよね。人間って悲しいもので、命令されると、その逆をやりたくなってしまう。これが脳の性質なんです。なので、ゲームをやめなさいっていうのは、油に火に油を注ぐようなもので、逆にもっとやりたくなってしまいます。
――なるほど、確かに「やめなさい」と注意しがちですね。ではどうすればよいのでしょうか。
大切なのは、「命令」ではなく、「質問」をすることです。
一番ですね有効な方法としては、「あと何分で止めるの?」っていうふうに聞くことなんです。子供というのは年齢によっても違うんですけど、「もう30分やったらやめる」とか、「1時間やったらやめる」と言います。そうすると、不思議とやめる確率が高まって驚くかもしれません。通常、子どもは、「やめなさい」と言っても、今は「ゲームをやっている」「TVなどを観ている」わけですから、やめるイメージは到底できません。
ですが、「いつやめるの?」と聞いた瞬間に、いつやめようかなと子どもなりに想像しはじめます。脳というのはイメージが浮かんだ瞬間に、その行動を実行しようとする不思議な性質があります。これを「コミットメント効果」といいます。親が決めたことではなく、自分で決めたほうが行動しやすくなるんです。なので「あと30分でやめなさい」と言うのは、あまり効果がありません。
話すときは、必ず目を見て話させる
――なるほど。でも、話しかけても子どもが聞かないことがありますよね。生返事で返すというか。それだとあまり意味がないですね。ゲームやTVの映像が頭を支配しているので、やめるイメージが頭に浮かびません。必ず、一度、ストップしてもらってから、こちらに体と顔を向けた状態で話すのがポイントです。言葉で話しかけても振り向かないときは、肩を軽くぽんぽんするなど、身体的接触で気づかせるというのもよいでしょう。
はじめる前にしっかりと約束をするのもいいと思います。
それでも時間通りにやめないときは、子どもの尊敬する人の名前を挙げるのもよいでしょう。例えば「大谷選手だったらどうすると思う? そんなゲームばっかりやっているかな?」と、これもきちっと一度、今やっていることをやめさせてから話してみてください。
有名人じゃなくても、兄弟とか、身近な人の名前を出してもいいでしょう。
もう1つ、効果的なのは、終わる時間に音楽を流すことです。好きな曲がかかると、脳はドーパミンが出て、切り替えのスイッチが働きやすくなります。
買い物をしているとき蛍の光がかかると、「あっもう閉店だ」とどこかそわそわした気持ちになりますよね。音楽には、気持ちのスイッチを切り替える力があるので、効果的な方法だといえると思います。
――ありがとうございます。僕も子どもに試してみます。
【今回お話を聞いた方】
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を紹介し、企業から教育者、高齢者、主婦をなど含めてこれまで3万人以上に講演会を行う。「ザ!世界仰天ニュース」「モーニングショー」「カズレーザーと学ぶ。」などテレビ出演も多数。2019年、『脳科学的に正しい 一流の子育てQ&A』(ダイヤモンド社)で著者デビュー。『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)が20万部のベストセラーに。
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