近視にかかわる「目の奥行きの長さ」は簡単に測れる!?

「光干渉眼軸長測定装置」
子どもが近視かどうかを知る方法として最も身近なのが、視力検査だと思います。もちろん非常に大切な検査ですが、そのときの体調などにも左右されたり、勘であたったりすることもあり、視力がきちんと計れないこともあります。「もしかして、実際はもっと視力が悪い可能性があるってこと?」
そう不安を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。
子どもの近視の進み具合を正確に、診断・予測するためには、近視に深く関与する「眼軸長(眼球の奥行きの距離)」の伸びをきちんと測ることがとても重要です。下記の関連記事でも説明しているとおり、成長の過程で身長が伸びるのと同じように眼軸も伸び、それによって近視が進むからです。
眼断面図


「お子さんの近視の進み具合を知るためには、眼軸の長さを測る検査がとても大切です。身長やからだつきと同じように、眼軸の長さや角膜のカーブにも個人差があります。成長とともに変化していくので、一度だけではなく、継続して測定する必要があります。検査は短時間で簡単ですし、何度測っても人体への悪影響はありません。
眼軸の長さは、お子さんが検査機器にお顔をのせられる年齢であれば、どなたでも測定することができます。個人差はありますが、早くて3歳くらいから可能でしょうか。」
眼軸を測るために使われる検査機器は、正式には「光干渉眼軸長測定装置」といって、瞳孔からレーザー光をあてて眼軸の長さを測るものです。
この装置では、眼軸長だけでなく、角膜の厚さや前房(角膜と水晶体に囲まれた部分)の深さ、水晶体の厚さなども測ることができます。大人の白内障の治療では、眼内レンズを入れる手術のための検査でこの検査装置が用いられます。
難しい名前の装置なので、はじめてお子さんにこの検査を受けさせるときには、「眼球の長さを測るなんて、なんだか怖そう。大がかりな検査をするのではないかしら」と不安に思う親御さんもいるようですが、心配はご無用。測定はいたって簡単で、機器にあごをのせて、下の写真のように中をのぞくだけ。数秒で終わりますし、痛みやまぶしさなどもありません。

「子どもの患者さんからは、検査をする前に“シュッて空気が出る?” “まぶしくない?”と聞かれることも多いのですが、そのようなことはないと説明すると、安心してくれます。」(宇井先生)
眼軸の伸び方を知るためには、定期的に測定することが重要なので、理想的には3か月に一度、最低でも半年に一度は測定することが望ましいと思います(注)。視力を測定する検査は自覚的な検査であり、日によって変動するうえ、待ち時間や目の疲労度によっても変わってきます。これに対して、眼軸長の測定は他覚的な検査であり、継続して測ることによって、近視の進行度合いを客観的に評価することが可能なのです」
お子さんの近視がどの程度、進みそうなのかを予測するために、眼科を受診するときにはいつもの視力検査だけでなく、眼軸長を測ることも大切だということを覚えておきたいですね。
注:眼軸測定はすべての眼科で実施しているわけではないので、まずは眼科医院に問い合わせてみてください。
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